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2023年9月19日
ひばりだよりvol.9「『I』を持つ」

以前母に、「人の幸せってなんだと思う?」と聞かれたことがあります。

 
ちょうどその頃、高齢の祖母が介護施設に入所しており、コロナがあって面会を制限されていたような時期で、母は高齢の祖母を自宅で介護すべきかどうか、悩んでいたのでした。

ご年配の方の中には「自宅で死ぬのが幸せ」と言う人がいますね。

母の頭の中にはその言葉があったのだと思います。

 

しかし、唐突に「人の幸せってなんだと思う?」そう聞かれたとき、私は明確な答えを返すことができませんでした。そして、祖母が亡くなってから後もその答えを考え続けていました。

 

結局これが幸せ、これは幸せでない、そんな風に言うことはできないと思います。

ですが、今の私なら、「幸せとは、好きなことをしていることだ」と言うと思います。

ちなみにこれは単に、「自由」という意味ではありません。自分が夢中になって楽しめることがあって、それに取り組むことができているということです。

それが仕事であればラッキーですが、趣味レベルでもいいと思います。

例えば、ゲームとか、本を読むとかでもいいんです。どんなことでも、自分さえ純粋に、時間を忘れてしまうほど楽しめたら、そして、そんな時間を多く持てたら最高に贅沢で幸福な人生だと思います。

 

私は今、音楽教室の事務に携わっていますが、音楽教室をはじめすべての習い事というものは、大人であれ子供であれ、そういった自分を幸福にする「好きなこと」を見つける為にするものだと思っています。

もちろん、将来プロになる為にやっているのだという方もいらっしゃるでしょう。ですが、好きじゃないことでプロになっても幸福ではありません。将来不幸になってもいいから、この道で生きていきたいという人はたぶんいませんよね。まずは「好きであること」が前提だろうと思います。

 
こういった話をひばり音楽教室の講師の皆さんとじっくりしたことはありませんが、おそらく皆同じような想いでいると思います。生徒さんが心から好きになることを見つけるお手伝いをしている、そんな気持ちで指導しておられることと思います。

 

近頃、ChatGPTが世間を賑わせています。こういった文章を書くような仕事をしていると、AIに仕事を奪われる日もそんなに遠くないのではという気がしてきます。

莫大な情報を集めて日々進化するAIは、エッセイ風の文章を書いたり、音楽を作ったり、そういうクリエイティブなことも人並みにできるそうです。一度学んだことは忘れないのですから、記憶力や、反復練習による鍛錬などが必要な分野は、いずれAIの方が上手くやるようになるでしょうね。

 
たとえば社会で生き残る為と思って必死で受験勉強をしたとしても、人間の学力なんぞ役に立たなくなる時代が来るでしょう。超絶技巧でバイオリンを弾けても、意味がなくなるかもしれません。つまり、機械のように正確に精密になろうとする努力はこれから先の時代では、全部無駄になるとも言えるのです。

 

じゃあ、機械にはできず、人間だけができることとはなんでしょう。

私が思うにそれは、「I」という主格で物事を考えるということです。コピーしかできませんから、機械には「私」性はありません。

私は思う、私はこう感じる、私はこれが好きだ。

そういう、他人の評価軸に囚われない、「I」を持つことが、人間だけにできる唯一のことであり、最も素晴らしいことであるような気がします。

 

つまり、自分が主体的に、自分の心の動きを感じ取り、心が純粋に喜ぶこと、好きなことに夢中で取り組む、それこそが人間に与えられた最大の幸福なのではないかな、と最近そんなことを考えています。

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