ブログ
2024年7月15日
ひばりだよりvol.19「草木と人の心と」

春には沢山の芽を出し、花が咲いた可愛らしさのある草木も梅雨が終わる頃には、この瞬間に伸びているようすが見えそうなほどの勢いで緑が一面に広がっていきます。
 
年末の寒い時期に、小さな庭がある所へ引っ越しました。冬のさなかで、庭は土と茶色い枯れ枝ばかりでした。
 
その光景を見たときにふと思い出した物語の一場面があります。
児童文学の『秘密の花園』です。
主人公のメアリが、荒れ果てた茶色い枯れ枝ばかりの庭を見て、死んでしまっているのだろうかと聞くと、
植物や動物に親しむ少年は、枝を少しだけナイフで切ります。
芯の部分は美しい緑をしていて、「枯れたように見えても、春にはちゃんと葉や花がでるよ。」と教えてくれる場面です。
 
その物語の通り小さな庭に、春が近づくにつれて土の中で眠っていた球根から水仙が咲いて、
切り株からもぐんぐん芽が伸びてきました。
枯れた枝だと思っていたところからは、真っ白で美しい雪柳が咲きました。
雨が続いたあとの梅雨の晴れ間には、どの植物もどこまでも青々と伸びていき、その力に圧倒されました。
 
『秘密の花園』の中では、閉ざされた庭を甦らせるために土を掘ったり余分な枝を切ったり、種を蒔いたりしているうちに、同じように閉ざされた子供の心が、一緒に春に向かって、風が吹いて新芽と花が顔を出していく姿が描かれています。
 
子供の心も大人の心も、もし、一見茶色く枯れてしまっているように見えたとしても、芯の部分にはみずみずしい緑色が残っていると信じること、ゆっくりでもいつか植物と同じように芽が出るために、周りが寄り添うことの大切さを、『秘密の花園』を読み返しながら感じました。
1993年にこの小説を映像化した映画も素敵です。

BACK